Report

2019.2.21Thu

〔RENEW 2018〕フィールドワークレポート3

Text / YONEHARA Yuji

本記事は京都精華大学独自のカリキュラム「2018年度 国内ショートプログラム」にて、福井県・鯖江市における日本最大級の工芸イベントである〔RENEW 2018〕を3日間にわたってフィールドワークした学生が執筆しました。

フィールドワークのすべてをここで伝えることはできませんが、3日間で見聞きした膨大な情報から学生自身がもっとも関心を持った内容をまとめました。

学生たちが現場で感じた「空気感」がすこしでも伝わりましたらうれしくおもいます。

指導教員:伝統産業イノベーションセンター長 米原有二

 


 

移住職人のススメ

宮本郁〔芸術学部 日本画専攻 4回生〕

10月19日(金)から21日(土)にかけて福井県鯖江市にて行われたRENEWに参加した。前日18日から福井入り。3泊4日。(写真上:鯖江駅前、さっそくメガネだらけで興奮する)近いとはいえなかなか行く機会のなかった場所だけに、プチ旅行気分だ。一緒に行く友達といかに安く行くか会議を行い、貧乏学生鈍行学割旅がスタートした。一番安い方法で行くと集合時間の二時間前についてしまう罠付き。

写真:名物「山うに」を使ったご飯。さっそくご飯が美味しすぎる…

 

そもそもこの鯖江はいろいろな工芸が集結していて、もちろん職人と呼ばれる人が多くいる。その中でも福井県外出身者(移住者)の職人がとても増えているというのだ。勝手なイメージだがよそ者はやる気があってもなかなか受け入れてもらえないのでは?という気持ち、疑問が私の中にはずっとある。というのも、若くして活躍している職人さんのインタビューなどを読むと大半が「親(家)が職人で…」というものが多く(読んだものがたまたまそうなだけな気もするが)、あーやっぱりかみたいな気持ちになってしまう。それが悪いというつもりは毛頭ないが、「職人不足で…」と聞くと「全くツテのない者には敷居高すぎですから!」という気持ちが拭えない。やっぱり家族に継いでほしいんじゃない?みたいな。「職人」という生き方に憧れを持つ者として、自分のそういう長年の思い込みを打ち砕いているという地域があると聞いては行くしかあるまいと。そう思い、移住者で職人として活躍する人たちに実際どうなの鯖江?という質問をぶつけてきました。

写真:RENEWのメイン会場。目を引く赤い丸がRENEWの目印

 

モノづくりをしたいなら…

鯖江ではさまざまなモノづくりが盛んで少し歩くだけでも工房がたくさん目に入る。漆器、メガネ、和紙、桐たんす、打ち刃物など…。群馬県出身の西山和紀さんはHacoaで働く。

写真:RENEW中は職人さんが作業しているところを覗ける!大きな機械だらけでウオーッ!となりました

Hacoaは漆器の木地作りを応用して木工の雑貨を製造販売する工房だ。

写真:木地から漆器へ…。こちらは漆器のオーダー生産をする「ろくろ舎」で撮影

 

もともと群馬で彫金をやっていた西山さん。群馬は大きな工場が多く、1人が一つの工程を延々とやることが多い。それは「モノづくりをしている」という実感が得にくかった。有名なダルマ以外にはあまりモノづくりをやっていないこともあり、その点福井はたくさんの工芸品に溢れている。「モノづくりが好きな僕にとってはなんていいところなんだ!と思いましたね」。

写真:ワークショップ中にインタビューに答えてくださった西山さん。遅くまでありがとうございました…!

それまでは木に関わる仕事はやったことがなかったという西山さん。ここは元保育士や銀行マン、板前など異色の経歴を持つ人が多いらしく、全くの素人からここで職人になっていく人の方が多いかも…とのこと!やる気を買ってもらえる職場なのだそうだ。

 

情の厚いご近所!

東京都出身の嶋田希望さんは、漆器の制作販売を行う漆林堂で働く。

写真:漆林堂の漆器。漆器とは思えないほどカラフルな器が並ぶ

日中漆器を作って帰ってご飯を食べて寝るという生活が本当に楽しいと語る嶋田さん。「こんなに楽しくていいのかなと思うことがあります」と、話すにこやかな表情が印象的。

写真:見学者に工房内の様子を説明する嶋田さん

京都にある専門学校を出て2年、縁があり漆林堂に。鯖江には東京とのギャップを感じることがたくさんあるという。まず、道に人がいない。車社会のため歩いている人がほとんどいないようだ。確かに私もこの4日間移動にはバス、車を使うことが多かった。歩ける距離にお店が密集しているわけではないので移動範囲が広いなと感じる場面もあった。車は1人1台が当たり前。雪が多いことも違いのひとつ。朝、窓を開けると自分より高く雪が積もっていたことも…。今は「またか」と思うようになり、慣れてきた自分に少し驚いたという。

 「人の情が厚いところが、鯖江に住んでていいなと思うところです」。手を差し伸べるのは当たり前と考える人が多く、周囲の人に助けてもらうことがよくあるそう。田舎は閉鎖的でよそから来た人には冷たいんじゃない?という気持ちを持っていた私にはびっくり。いい借家を紹介してもらったり、食べ物のおすそ分けをしあったり…近所の人との距離感が、聞いていて心地よい。「みんな心にゆとりがあるんです」。

写真:山うに入りたこ焼き。これしか食べられなくなったという声、多数

 

集まった若者が町をつくる

鯖江に移住して職人として活躍する人たちにお話を聞いたが、「やりたいことが出来て本当に楽しい」「周りの人に助けられて…」と話す様子から環境がとてもいいことが伺えた。たくさんの工芸の集まる町なので職人が多いため、何かやろうと思ったときに「これは○○さんに頼めばできる!」とすぐに協力して新しいことを始められる。エキスパートの集まりってとてもおもしろい。さらに、移住者コミュニティが確立しており、行政からの支援も厚い。町全体が、気軽に移住できる独特の雰囲気を持っている。

写真:RENEWでお世話になったレンタサイクル。君のおかげで走り回れた!

この4日間で「職人」という堅いイメージが払拭された。元々住んでいる人、移住してきた人たちがごちゃ混ぜになり、みんなが町を作っていく。こんな素敵な場所で生み出される工芸品が素敵なモノにならないわけがない。