伝統産業イノベーションセンターについて
未来の、手仕事のために
京都精華大学が4年制として開学した1979年、学生が伝統産業の工房に通い手仕事の技やその精神性を学ぶ〔学外実習(現:京都の伝統産業実習)〕が開講しました。以来、約40年間で累計3,500名超の学生がこの実習に参加し、今では京都精華大学の名物科目のひとつとなっています。
身につけた伝統技術を自身の表現に取り入れる学生もいれば、日本文化への関心を深めて研究者や起業家を目指す学生もいました。また、実習をきっかけに職人としての道を歩み始める学生も少なくありません。実習期間はわずか2週間ですが、さながら弟子のように過ごす日々が学生たちに「伝統」と呼ばれるものの一端を伝えています。
実習を契機に、京都精華大学では多角的な視点で伝統産業界との協業が始まりました。製品開発やブランディング、技術記録・調査、職人文化研究など、京都精華大学が誇る5学部それぞれの専門性を活かした取り組みをおこなっています。
伝統産業イノベーションセンターは、これまで京都精華大学が培ってきた伝統産業の知見を集約し、より活発な教育・研究活動に還元するために2017年に設立しました。〔研究〕〔教育〕〔社会連携活動〕を大きな軸として、世界有数の工芸産地・京都を拠点にさまざまな国や地域の手仕事との連携を目指しています。
かつてない速度で暮らしのあり方が変化する時代にあって、1000年前の職人技に挑み続ける伝統産業界の知見は私たちに多くの気づきをもたらせます。
技術の背景にある物語や、土地に暮らす人々の営み。
自然素材の厳しさ、身体を動かして汗を流すことの意味。
伝統産業が次代への継承に苦しむなか、大学が「伝統」に学ぶだけの時期は終えました。
先達への尊敬と深い理解をもとに、文化の本質が受け継がれた「未来」を描き続けることが、伝統の街で育った京都精華大学の使命だと考えます。
京都精華大学
伝統産業イノベーションセンター長
米原 有二