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2020.1.29Wed

「We – 工芸から覗く未来」 オープニング

Text / YONEHARA Yuji

<京都精華大学 伝統産業イノベーションセンター×KYOTO KOGEI WEEK 2019>
シンポジウム「 We-工芸から覗く未来」
日 程:2019年9月1日(日) 13:00~17:00
会 場:京都国際マンガミュージアム
主 催:京都精華大学 伝統産業イノベーションセンター
共 催:「KYOTO KOGEI WEEK」実行委員会
協 力:文化庁京都府京都市京都商工会議所
参加費: 無料
 
 

シンポジウム「 We-工芸から覗く未来」の全文公開にあたって
We-工芸から覗く未来」第一部 「ファッション素材としてのフィッシュスキンと京都の染色技術」
We-工芸から覗く未来」第二部 「手仕事の、次の1000年のために」
We-工芸から覗く未来」ディスカッション 「未来へのバトン」

 
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シンポジウム「 We-工芸から覗く未来」
オープニング
 
[司会]
吉村和真
京都精華大学 副学長
立命館大学大学院博士後期課程単位取得退学。専門は思想史・マンガ研究。現在、これまで蓄積してきたマンガ研究成果の社会還元を進めている。主編著に『差別と向き合うマンガたち』(2007年)、『マンガの教科書』(08年)、『複数の「ヒロシマ」』(12年)、「コンビニエンスなマンガ体験としての『知覧』―『実録神風』のメディア力学」(福間良明・山口誠編『「知覧」の誕生』所載、15年)、「手塚治虫―逆風が育んだ「マンガの神様」」(岩波叢書『ひとびとの精神史』4巻所載、15年)、『障害のある人たちに向けたLLマンガへの招待―はたして「マンガはわかりやすい」のか』(18年)など。
 
[ご挨拶]
ウスビ・サコ
京都精華大学 学長 
1966年、マリ共和国に生まれる。 高校卒業と同時に国の奨学金を得て中国に留学。  北京語言学院 (現・北京語言大学)、 南京市の東南大学等に6年間滞在して建築学を実践的に学ぶ。1990年、東京で短期のホームステイを経験し、アフリカに共通するような 下町の文化に驚く。
1991年に来日し、同年9月から京都大学大学院で建築計画を学ぶ。博士号取得後も日本学術振興会特別研究員として京都大学に残り、2001年に京都精華大学人文学部教員に着任。2013年には学部長。2018年4月から現職。現在の専門は空間人類学。
 
山下晃正
京都府副知事

商工部長、企画理事兼商工労働観光部長、企画理事(緊急経済対策・未来戦略担当)を経て、
平成25 年から現職。
 
 
 
[同時通訳]ART TRANSLATORS COLLECTIVE
田村かのこ
相磯展子
樅山智子
 

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■吉村:ただ今より、京都精華大学と「KYOTO KOUGEI WEEK」によるシンポジウム「We - 工芸から覗く未来」を開会いたします。本日の司会を務めます、京都精華大学副学長の吉村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。


 京都精華大学は、芸術、デザイン、マンガ、ポピュラーカルチャー、そして人文学部という5つの学部を有しております。それらを総合して「表現の大学」というコンセプトを掲げております。その活動内容が、2018年度に文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」の採択を受けました。研究内容は、本日のシンポジウムに深く関わります「持続可能な社会に向けた伝統文化の『表現』研究」です。 このテーマに基づいて、本日は国際的な展開も視野に入れながら関係者の皆さまをお招きして対話型のシンポジウムを開催いたします。ご覧いただきました通り、会場内はお互いが対話できるようなかたちでレイアウトを組んでおります。

 また、このイベントは「KYOTO KOUGEI WEEK」と題して京都府を主幹に開催されている一連の工芸・伝統文化に対する取り組みの一環ともなります。会場となったこのマンガミュージアムは、京都市と京都精華大学の共同事業で運営をおこなっています。こうして、さまざまな機関、さまざまな方々と連携しながら「We」、つまり私たちの問題にアプローチしていきたいと思っております。ご来場の皆様、本日は最後までよろしくお願いいたします。
 それでは、最初に京都精華大学の学長であります、ウスビ・サコよりごあいさつ申し上げます。

 

■サコ:皆さん、こんにちは。私はウスビ・サコと申します。昨年度から京都精華大学の学長を務めております。先ほど吉村副学長の挨拶にもありましたように、京都精華大学は長年、伝統産業に関わってきました。そして、ようやく京都府やさまざまな関係者と共にこうした場が設けられたことを、心から感謝しております。

 


 京都精華大学は、学生たちが約2週間にわたって職人さんの工房で学ぶ「京都の伝統産業演習」を40年間以上にわたって取り組み、これまで3,500人以上の学生が伝統産業の現場でお世話になってきました。
 そうして、教育面ではとてもお世話になりながらも、後継者問題をはじめとする伝統産業が抱える諸問題にはこれまでしっかりと取り組むことができませんでした。伝統産業の諸問題に向き合うことを使命に2017年度に伝統産業イノベーションセンターを設立しました。このセンターでは「これからの伝統産業」をイノベーティブなかたちでどう考えるかということを大きな柱としています。

 私自身はマリ共和国の出身です。マリは、実は伝統産業が盛んなところです。マリの伝統産業というのは世襲制です。だから、代々ずっと同じ仕事をやってきて、それが父から子へというふうに伝わっていることが多いんです。ただ、日本と違うのはマリは口承文化です。文字に残されておらず、記録がないんですよね。ですので、技術や知識が伝承されずに途切れてしまう、ということがあります。日本ではこうした心配は少ないかも知れませんが、マリのようなケースは世界各地にかなりあるのではないかと思います。そうした意味でも、私たちが「伝統産業のイノベーション」を考え、その過程で記録し、さらにそれをどう活用するか、という「議論の場づくり」の重要性は高いと考えています。そして、このシンポジウムがその第一歩じゃないかな、と私は思っています。

 


 今日のこのシンポジウムを通して、伝統産業の「今」と「これから」をどう考えていくか。それをさまざまな人の価値観や視点を出し合い、議論をし合いたいと思います。そして、終了後に皆さんがそれぞれ帰路につくときに、これからの伝統産業に対するちょっとした思いが芽生えていたらいいなと思っています。
 このシンポジウムのご登壇を引き受けて頂いた皆さまにも心より感謝申し上げます。京都精華大学は小さい大学ではありますが、これから、京都という土地が持っている命をともに輝かせていきたいと願っています。今後とも、皆さんのご協力とご支援をいただきたく、私の挨拶とさせていただきます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。


■吉村:続きまして「KYOTO KOUGEI WEEK」の主催である京都府の山下副知事にご挨拶をお願いいたします。

 

■山下:お休みの日に本当に多くの方にご出席いただき、誠にありがとうございます。また、このシンポジウムができるのも京都精華大学さんのおかげでございます。ありがとうございます。また、ご登壇していただく皆様方、本当にありがとうございます。

 

 まず最初に、本日の会場が京都国際マンガミュージアムですので、先般の京都アニメーションで起きました痛ましい事件について申し上げます。私は事件からのこの2〜3週間、多くの時間を京都アニメーション再建のために費やしてきました。多くの犠牲者があり、いまだ重篤な方もおられます。京都アニメーションの再建は私たちにとってとても大事なことだと考えています。皆様にもぜひとも応援をしていただきたいと思います。

 本日のシンポジウムでございますが、京都府は1999年に「産業活性化ビジョン」を策定しました。私も担当をしておりましたが、そのときのキーワードが「グローカル」でした。これは、「グローバル社会において、京都のローカル性をどう活かしていくのか」という議論から生まれました。本日のシンポジウムの第1部では、「ファッション素材としてのフィッシュスキンと京都の染色技術」という内容です。これは生物多様性の維持や、資源の有効活用など、まさしく今、世界共通の課題になっておりますサスティナビリティを産業面でどのようにして維持していくのか、ということに関わるテーマです。こうした分野で、魚の革というものが、どのように使われ、どんな意味を持つのかということを考える良い機会になれば幸いです。

 また、第2部は「手仕事の、次の1000年のために」というテーマです。私は書道をしているのですが、書を掛け軸などに仕立てる表具師さんの技術は素晴らしいものだな、といつも思います。表具をする際には本紙を糊で裏打ちしますが、この糊は接着力が極めて低いものを使います。紙と紙を貼り合わせる際に接着力が弱い糊を使う理由は、将来の修理を見据えているからです。後世においていかに剥がれやすくあるか、ということが大きな理由なんです。このように、日本の文化には、自然と寄り添いながら、自然の力を借りながら、いかに永続性を考えるかという特色があります。これは、これからのサスティナビリティ社会を考えると、極めて大事な発想だと思います。グローバルな社会でありながら、世界均一の価値観にならずに、それぞれの文化や想いを尊重し合えるようになることが本当の意味でのダイバーシティを確立できるのではないかと思います。また、そうして世界が共通の課題や目標に向かっていくことが、未来を拓くことに繋がっていくと考えます。

 この会場は、民主主義発祥の国、英国の国会と同じような構造ですね。今日ここに足を踏み入れたとき、とても新鮮な気持ちで、わくわくしました。今日のシンポジウムを楽しんでいただきながら、先ほどサコ学長がおっしゃったように、未来についての皆さんのお考えを共有する機会になればと思います。多くの方にご来場頂き本当にありがとうございます。


■吉村:ありがとうございました。それでは、第一部の「ファッション素材としてのフィッシュスキンと京都の染色技術」を開始いたしますので、登壇者の方、テーブルのほうへどうぞご着席ください。よろしくお願いします。