Project

ファッション業界における持続可能な原材料としての魚革の開発

概要

アイスランドの伝統技法で鞣したサーモンの革

 

 

ファッション業界における持続可能な原材料としての魚革の開発
Developing Fish Skin as a sustainable raw material for the fashion industry

 

現在、ファッション素材として用いられる牛革の環境負荷の高さが世界的な課題となっています。

本研究プロジェクトは、牛革の代替素材として北欧で獲れる魚革に着目し、[鞣し]や[染色][縫製]などの加工技術を

牛革と遜色ないレベルまで高めようというものです。

ファッションの世界を切り口に、持続可能社会、環境問題等への取り組み・提言をおこなう研究のため、

試作や実験においてはできうるかぎり手仕事と天然素材の使用が求められています。

 

京都精華大学では、ファッション領域(研究者:小北光浩)と伝統産業領域(研究者:米原有二)が中心となって研究チームを発足し、学外の伝統産業関係者の多大な協力のもと、「日本の伝統技法・天然染料を用いた魚革の染色」の実験をおこなっています。量産には不向きな草木染めや藍染めの精度をコントロールし、魚革に安定的に染色を施し、ファッション素材として用いることのできるレベルに挑戦しています。

 

本研究プロジェクトは、世界中から10機関が参加する国際研究プロジェクトで、それぞれの機関が専門分野を活かした調査・研究を実施しています。ファッションデザイン、マテリアルサイエンス、海洋生物学、伝統産業、環境学などが複合する研究プロジェクトです。

本研究は、EU最大規模の研究助成[HORIZON 2020]の助成対象プログラムです。

 

[参加機関]
シェンカー大学(イスラエル)
ロンドン芸術大学 ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション
ロンドン芸術大学 センター・フォー・サステナブル・ファッション
Atlantic Leather
Ars Tinctoria s.r.l
・イスラエル海洋センター
ミラノ工科大学
アイスランド芸術アカデミー
・Hollo digital print ltd.
・京都精華大学

 

以下、研究要旨です。


 現在、ファッション業界は、浪費的で環境汚染をもたらす産業からクリーンで循環型の業界への変化を目指し、持続可能な取組に関し著しい変化を経験している。本プロジェクトでは、「魚革」というファッションにおける新たな種類の原材料を開発することに焦点を当てた研究を行なう。
 魚肉と魚革を、実現可能な経済的で有益な製品として利用することで、養殖漁業とファッション業界を融合することを目指す。魚革は何世紀にも渡り北欧やアジアの先住民によって利用されていたが、より優れた特質の皮革によって脇に追いやられてしまった。しかしながら、今日、最先端科学技術や消費者の好みの変化、循環型経済の原理によって、ファッション業界の既存の考え方に対して挑み、同業界における魚革利用の実現可能性を探求することが可能になった。
 本プロジェクトへの参加機関間の研究者派遣やネットワークによる研修プログラムを通じて、ファッションデザイン、マテリアルサイエンス、海洋生物学といった異なる領域からの知識を凝縮し、学者や産業界の専門家が、市場において魚革を工業規模で取り上げるための新たな技術や手法の開発に邁進する。